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Dec 24 2011
じじつ今日の日本において、出版現象は、産業的に閉塞状況に追い込まれているだけでなく、デジタル技術の浸透によって、これまで無条件に自明視してきた大前提である冊子体の存在が相対化されつつあり、その意味で一種クリティカルな局面を迎えつつある。この現状において「書籍あるいは雑誌を生産し流通する」のが「出版」であると前提することは、控えめにいっても牧歌的であるといわねばならない。つまり、あらかじめ「出版」という語の指示対象を固定してしまうことに説得的な根拠は見出せない。問われなくてはならないのは、「出版」の意味をどのように再記述するか、でなければならないはずである。
 本書は、たしかに出版を対象として取り扱うものの、出版に固有の研究領域や研究体系を確立することには特別の関心をもっていない。これはメディア論による出版研究の試みである。出版の変容に焦点をあてるとともに、それが基層において知の再編といかに連動しているのかを問うていく。あえてこう別言してもよい。ここで研究対象に「出版」を据えるのは、ひとつの戦略にすぎない。本書の志向は、出版について研究することだけに向っているのではない。出版を問題化することによって、今日の知をめぐる文化状況にたいするひとつの批判的視座を確保するための回路を開削することに向けられているのであり、そこからさらに出版というメディアを捉えかえすという、再帰的なループを描くことに向けられている。
……
かくのごとく長い歴史をもつがゆえに、出版は現代社会において自明な、いわば「透明」な存在となっている。出版は、そのすみずみにいたるまでさまざまな形でメディアが浸透している現代社会において、すでに十分に社会化された数少ないメディアである。
— 長谷川一, 『出版と知のメディア論――エディターシップの歴史と再生』, みすず書房, 2003, p13-14

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